グリズリーベアー Grizzly Bear

主な生息地カナダ/ブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州、ユーコン準州、ヌナブト準州
アメリカ/アラスカ、イエローストーン国立公園
体長・体重180〜260cm、110〜530kg
毛の色ブロンド、褐色
好物植物(草の根、ベリー類)、サーモン
特徴横広の顔の輪郭の割りには耳が小さく、肩に筋肉の塊である瘤がある。

グリズリーベアー(Grizzly Bear=ブラウンベアーまたはビックブラウンベアー)は、ヒグマの仲間であり、日本ではハイイログマやアラスカヒグマなどと呼ばれる種類のクマだ。
このグリズリーという名前は「グリズル」という言葉から由来しており、毛先がまだらに白くなっている、白と暗色の混じりあった毛という意味がある。多くのグリズリーベアーが、暗色の毛の先端だけが白っぽい毛色をしているのが一つの特徴だが、全体的な毛色は淡く輝くようなブロンドから、赤みがかったブロンド、薄い褐色、中間色から薄い褐色、そして黒っぽい毛色まで様々な色調の毛を持っている。さらに胸から肩にかけてまるで襟のように白っぽくなっている個体、背中と肩の辺りの毛が白っぽくなっている固体であったりと身体の部分によって色が違っていることもよくある。ただ、一般的に遠くから見るとグリズリーベアーは、足が黒っぽく背中の方にいくにしたがって明るい毛色に見える。そして身体的には、横広い顔の輪郭の割には耳が小さいこと、鼻筋が窪んでいること、肩に筋肉の塊である瘤があること(グリズリーベアーが地面を掘る能力に優れているため)、前足の爪が長い等の特徴を持っている。その体長は180〜260cm、体重110〜530kgと大型の雑食性哺乳類であり、雑食性とはいえ主には植物(草の根やベリー類)を好んで食す。秋になると産卵のために遡上してきたサーモンを捕るなど、冬眠前の食欲はかなり旺盛で一日1kg程度ずつ体重を増やし脂肪を蓄え、厳しい冬に備える。

グリズリーベアー 生息マップ

1800年頃の北米大陸では、アメリカ合衆国の西部から中部地域で、またカナダではマニトバ州周辺より西側でその生息が確認できたが、その後200年あまりの間に自然環境の変化等によりアメリカでは アラスカとイエローストーン国立公園でのみ、またカナダではブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州とユーコン準州、ノースウエスト準州、ヌナブト準州でのみと、その生息域は狭くなってきている。


ナイトインレットで出会った家族

グリズリーベアーに出逢う場所

-スチュワート STEWART-


クマ観察ウッドデッキ

フィッシュクリークのグリズリーベアー

1900年代初頭のゴールドラッシュで賑わいを見せ、道路は整備され、鉄道建設の計画まで持ち上がった。最盛期には一万人以上の人口を誇ったこの町は、程なくゴールドラッシュが終焉を迎えたことにより、鉄道建設は中止され、人口もみるみるうちに減少し、近年は700名程度の小さな町となった。その人々にいつしか忘れ去られ、林業で生活の基盤を作っていた町は今、動物と氷河の町として静かに息吹を上げ始めた。最寄りの空港はテラス空港もしくはスミザーズ空港である。テラス空港からスチュワートは車で約4時間、スミザーズ空港からスチュワートは車で約5時間弱の距離になる。ここでのベアーウォッチングはスチュワートに滞在しながら、そこから車で約10分、国境を越え、アメリカ合衆国アラスカ州ハイダーという町の郊外で行なわれる。フィッシュクリークというサーモングレーシャーの氷河の溶けた水が流れ込んでいるサーモンリバー(川)沿いにウッドデッキが作られている。そこからなんとも豪快にサーモンを追いかけるクマの姿を目のあたりにできる。言わば、クマの活動圏内で我々がウッドデッキに入り、動物園の逆の立場で観察するのだ。この辺りでよく見られるクマはグリズリーベアーで、サーモンリバーに毎年7月から10月にかけて産卵のために遡上するサーモンを目当てにやってくる。特にサーモンの遡上が始まる7月頃には、その元気なサーモンを追いかけ格闘し捕食する迫力あるシーンが間近に見られ感動的である。その他にもブラックベアーや白頭ワシ、時にはオオカミも姿も現し、こんな近くで野生の営みを観察できるのは世界でも数少ない場所といえるであろう。また、遡上したサーモンが、そこで力尽き、あるサーモンはグリズリーに栄養価の高い内臓部分のみを食べられ骨だけの姿になって河原や土手に捨てられ、カモメたちが貪る。よく見ると河原近くの草木はよく茂っている。その腐食したサーモンが肥料となっているからである。ここでは単にグリズリーの迫力ある野生の姿以外に、地味ではあるが食物連鎖そのものの自然の営みを観察して欲しい。
※シーズン:7月から9月


-ナイトインレット KNIGHT INLET-


やぐらからグリズリーベアーを観察

グリズリーベアーの親子

まさに秘境という言葉がぴったりと当てはまるこのナイトインレットは、インレット(入り江)に浮かんでひっそりと佇む一軒のロッジだ。その奥の森林にはグリズリーベアーを始めコヨーテ、白頭ワシなどの野生動物が暮らし、また目の前の海へ出ればイルカ、シャチ(オルカ)やアザラシ、時にはコククジラなどが見られワイルドライフウォッチングに最適な場所である。秘境と呼ぶもう一つの理由は、キャンベルリバーから水上飛行機でしか行くことの出来ない場所だからである。当初は、サーモンフィッシング専用のロッジとして建てられたが、森林伐採などの自然環境の破壊により、サーモンの遡上が著しく減少し、同時にそのサーモンを捕食するグリズリーベアーの姿も見られなくなった。ロッジ近くに人工のサーモン孵化場を作る事で再びサーモンが遡上し始め、グリズリーベアーもナイントレットに戻ってきた。現在はグリズリーベアーの観察ロッジとして営まれ、世界中の動物ファンから熱い眼差しを浴びている。
まずナイトインレットへは、サーモンフィッシングのメッカとして世界的に有名なキャンベルリバーが玄関口となる。キャンベルリバーはバンクーバー島にあり、カナダ本土より、バンクーバー空港から飛行機、または車とBCフェリー(ホースシューベイー〜ナナイモ間)を利用しての移動となる。さらにキャンベルリバーからナイントレットへは、先に述べたとおり、唯一の交通手段である水上飛行機にて、80kmほどの距離を約30分かけて北上し、ロッジ前に着水する。
  このロッジでは、スタッフが動物に関しての専門的な知識を持ち、ワイルドライフウォッチングの際にはそのスタッフがガイドとして動物の生態などを詳しく案内してくれるので、いっそう深い楽しみ方ができる。ベアーウォッチングでは、モーターボートやカヤック、手漕ぎボートで水上から陸にいるグリズリーベアーを観察、我々の動きを警戒させないよう彼らのテリトリーを犯さず自然のままでの状態で観察することを重点においている。ガイドの先導の元、自分でカヤックを漕ぎグリズリーベアーを発見した時の感動は何事にも変え難いものになるであろう。他にはハイキングの途中で木の上に造られた見晴台からの観察など様々な楽しみ方ができるのも特徴だ。また、インレットクルーズやサーモンフィッシングなどのアクティビティーも楽しむのがここナイトインレットの過ごし方である。
※シーズン:5月から6月及び9月から10月上旬


-グレートベアーレインフォレスト-


のしのし歩く巨大なブラックベアー

入り江に顔を出したグリズリー

ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島北端に近いカナダ本土の海岸から南東アラスカはグレートベアーレインフォレストと呼ばれている。それは、北アメリカ、チリ、北欧、及びニュージーランドでかつて豊富であった温帯雨林の最後の原生林である。9月になるとサーモンが2500箇所以上の川を遡上し、それを目当てにカーモードベアー、ブラックベアー、グリズリーベアーが海岸部にやってくるのだ。
※シーズン:9月